2015年、前社長からエステートプランを引き継ぐ。経営難だった自社を立て直し、現在に至るまで黒字経営を続ける。何よりも個々を尊重し、人に深く入り込む組織運営スタイルで、まずは、北九州一を目指す。
女性が活躍する内容のDMが届いたことです。DMのつくり方もうまいけれど、雰囲気がよかった。不動産会社では女性が活躍するのは珍しいのですが、エステートプランも女性が強く似ていると思いました。はじめてウィルの社長に会ったのは2019年11月、小倉での会食でした。ウィルは社員数も多く上場企業だったので自分だけでは不相応だと思い、他社の役員と一緒に行きました。私は会話を楽しもうくらいの思いで行きましたが、衝撃を受けました。
最初に興味を持ったのはウィルの文化です。どうやって社員教育しているのか、どうやって数字を上げる仕組みをつくっているのかなど話を聞いても形が見えない。マニュアル化されている訳ではなく、採用や教育を風土でつくり上げてきている。これはすごい!真似しようがないじゃないか!と思いました。しかしそれは、間違いなく自分が理想としているものでした。ブラジルの某経営者が唱える「個々を人として尊重していて、組織にルールがない」という奇跡の経営。ウィルはそれと似ているような感じがしました。
傍観して話を楽しむどころか、興味津々で、ウィルの新卒採用の話を聞いていました。どんな基準で学生を選んでいるか質問したとき、一言「ええ奴!」と、関西弁で回答されました(笑)。その「ええ奴」がどういう奴なのかを聞きたいのですが、これも明確に定義されていないようでした。「ええ奴」の認識が風土として会社に存在しているから、ウィルの社員は皆、その一言でわかるのだと思いました。
「タイミング」と「ウィルの文化・風土・人に惹かれた」からですね。まず、「タイミング」。ウィルに出会う前の2年間、別のコンサル会社に入ってもらい、とことん新卒採用に取り組みました。しかし、うまくいかず行き詰まり、社員も私も疲れ果てていたころ、ウィルに出会いました。
次に「ウィルの文化・風土・人に惹かれた」ということについて。採用活動につまずいてもういいやと思っているときでも、うちの社員は自分たちが乗っている船(会社)だから自分たちで何とかしないといけないという意識は持っていました。それが文化としてある会社なんです。ウィルさんと似ていますよね?そして、そういう組織はあるようでなかなか他にはない。部活等ではあるでしょうけど、会社という枠組のなかで皆が組織の課題について我が事にしている会社はあまり見ないなか、ウィルみたいな会社があることに驚きました。そして、暗黙知によって組織が機能しているというのが、私の経営の理想に近く興味を持ちました。さらに、そんな会社のトップと会って、話して、盛り上がって、感覚が似ているんだろうなと思いました。この業界の経営者でそんなふうに付き合える人は限られています。また飲みに行きたい。そう思える人でないと高いコンサル料は絶対に払わないですよ(笑)。
今まで私たちは真逆のことをしていたなと思いました。それまでの私たちは「背伸び」をして学生より上の立場で接するようにしていました。そのくらいの気持ちでいかないと、学生も尊敬したり憧れたりしてくれないと思っていたのです。ですが、過去の採用時に使っていた私の動画(自分では自信作)を見てもらった際、宮前さんに言われました。「等身大でやられた方がいいのではないでしょうか」と。「ウィルでは皆、等身大の自分を見せてミスマッチが起こらないようにしています。かっこよさだけではなくできないところも見せながら面接をしています」という話が、胸に突き刺さりました。心が折れているときに完全否定されるのではなく、こちらに足りないところをうまく突いてくれる。「等身大の自分たちでいく」、これこそ私たちらしいなと思い、変な力が抜けました。実際の面接に入ってからも、面接後に的確なフィードバックをくれました。自分たちが見落としているところや、もう少し踏み込んで話したら見えてくるなど具体的な指摘が非常に勉強になりました。
継続してお願いしようと決めたのは、宮前さんの言葉が社員たちに届いていると感じたからです。宮前さんが次年度採用の提案に来てくれたとき、少し二の足を踏んでいた社員に対しストレートに発破をかけるのではなく、宮前さん自身の仕事への姿勢の話を通して彼らの心に火をつけてくれました。
不動産売買で、北九州一番になります。小倉、福岡まで行きたいと思っています。しかし、数字や規模の目標は結果論であって、何より社員が幸せを感じられる会社でありたいですね。ノンストレスの会社にしたい。ストレスは、お客様や社員同士といった人間関係から生じます。特に社内の無駄なストレスを省きたいと思っています。当然足の引っ張り合いなどせず、協力しあったらいいと思っています。学校で例えていうならテストですね。テスト中に、できる人ができない人に教えたら全員100点になる。教えあってみんな100点になったらいいのに、カンニングしあえばいいのにと思いますよ。カンニングしあえる風土をつくりたいというような感覚です(笑)。たとえは悪いかも知れませんが、それくらい考え方を変えないと組織は一つにならない。カンニングしあえる人間関係がある風土をつくりたいと思っています。
また、上から押さえつける管理ではなく、お互いが教え合う空気をつくりたい。誰に言われるとかなく、当たり前のように自然に先輩が後輩に教える。「なんとなく」が風土としてある。「社長はおらんでもいい」と言われるような環境が理想です。まだしばらく私は必要そうですが、それが実現すれば会社はもっと強くなるはず。そして、もっと個々の色が鮮やかに輝いていく組織にしていきたいと思います。
(上記記事は2021年1月に取材させていただいた内容になります。)